No.168(2841) 「お帰り 寅さん」を再度観て
50本目の最新作「お帰り 寅さん」は、寅さんの甥の満男が主役。
寅さんは回想シーンでの登場です。
四角い顔で、おっちょこちょいで、喧嘩っ早いけど、涙もろく、人情に厚い。毎度、マドンナに恋をして(笑)、「とらや」の面々、妹のさくら、おいちゃん、おばちゃんは、ハラハラしながら、それでも優しく見守っている。子どもだった満男を含め、皆でちゃぶ台を囲む、一家団欒シーンは、まるでユートピアのようです。
対して、大人になった満男のシーン。おいちゃん、おばちゃんはすでに亡く、さくらにも高齢化の波が押し寄せ、満男のマドンナは国際紛争による難民問題に取り組む一方、親子の断絶問題に悩んでいる。
まさに「現実はつらいよ」です。
寅さんのシーンは日本晴れ、満男のシーンは雨が多いのも、その象徴なのでしょう。
ラストシーン、現実の辛さに立ち止まった満男に、回想の中の寅さんが呼び掛ける。
「満男、困ったことがあったらな、風に向かって、俺の名を呼べ。おじさん、どこにいても飛んで来るから」
涙する満男に、歴代マドンナのシーンが走馬灯のように流れ、最後はお馴染み、寅さんの啖呵売!…観ている私も、号泣に次ぐ号泣でした。
私達は、大切な何かを失ったのかもしれない。それでも、前を向いて、現実を生きていかなければいけない。でも、辛くなったら、ふと立ち止まって、昔を思い出して、風に向かって…。。
そんな思いに浸れます。
是非とも、ご鑑賞ください。
2020年07月11日 22:00